2018年5月17日木曜日

高岡のアシカ2

前回、高岡市で見つかった祖先アシカのことを取り上げました。また以前、祖先クジラの話題を取り上げた時、陸生の古代クジラの骨格化石には、進化論の根幹に関わるナゾが隠されているということを書きました。
 実は今回のアザラシやアシカを含む鰭脚類の進化にも、哺乳類の進化に関わる興味深い問題があります。

下の系統樹は、クジラと鰭脚類を含む哺乳類の進化系統樹(下線は潜水動物)をザックリ描いたものです。



この図には、他の海獣であるジュゴンやマナティーを含む海牛類が含まれいません。前回書いたように海牛類はゾウの仲間なのですが、このグループはアフリカ獣類としてくくられており、上のローラシア獣類とは別系統です。ちなみにローラシアとは大陸移動説において2億年前くらいに存在した超大陸で、現在のユーラシア大陸と北米大陸を含みます。鰭脚類はイヌ・ネコでいえばイヌに属しますが、イタチやアライグマなどを兄弟としてクマの系統から分岐してきたと考えられています。
 近年クジラ同様、鰭脚類の進化についても研究が進んできました。アザラシとアシカは、外見上、耳たぶの有無(有る方がアシカ)、陸に上がったときの立ち方・歩き方(アシカが4本脚で立ち上体を起せるの対して、アザラシはゴロっと寝転がって這うように移動する)で見分けられますが、以前はクマから進化したのがアシカ、イタチから進化したのがアザラシと考えれれていました。しかし分子生物学のデータを活用出来るようになってくると、オットセイ・セイウチを含むアシカとアザラシは同じ祖先から進化した単系統の生き物であることが分かってきました。また近年、これを支持する化石も見つかっていて、先回紹介した祖先アザラシ「アロデスムス」は1600万年前、アシカとアザラシの共通祖先「エナリアークトス」が2300万年前、陸生の祖先「プイジラ」が2200~2400万年前(3900万年前という説もある)の地層から見つかっています(下のイラストは川﨑悟司さんのブログから拝借しました)。プイジラは、その復元図からもわかるように、ほとんど現生のカワウソと同じ形態です。


アロデスムス
エナリアークトス
プイジラ

 さてここからが問題なのです。次の図は1983年のScience誌に掲載されたエナリアーアークトス全身骨格化石発見の論文からとった鰭脚類進化の系統樹です。




 Odobenidaeはオットセイ、Phocidaeはアザラシ、Otariidaeはアシカ、Pinnipedia   Pinnipedimorphaは鰭脚類です。左上のTerrestrial arctoids は、この論文の出版時はまだ見つかっていなかった陸生の祖先鰭脚類のことで、プイジラにあたる祖先動物に相当します。この系統樹を見ると、現存の鰭脚類が共通の陸生祖先から単系統で進化してきており、アシカとアザラシの共通祖先がエナリアークトス、アロデスムスが現生のアザラシに近い生き物であることが良く分かります。

この項続く

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