(1)アザラシとアシカを含む鰭脚類は、大きなくくりではイヌ・ネコの仲間(食肉目)で、クマやイタチとともにイヌの系統から分岐して進化した。
(2)アザラシ・アシカ・オットセイは単系統、すなわち共通の祖先から進化してきた。
(3)化石を手がかりにする古生物学と遺伝子解析を手がかりにする分子生物学によって、鰭脚類の祖先生物がいくつか同定されている。
(4)同定されている祖先生物の代表的なものが、新しいものから順に、1600万年前の地層から発見されたアロデスムス(Allodesmus)、2600〜2800万年前の地層から発見されたエナリアークトス(Enaliarctos)、2200~2400万年前の地層から発見されたプイジラ(Puijila darwini、3900万年前とする説もある)である。
アロデスムス |
エナリアークトス |
プイジラ |
化石の形態から、アロデスムスはアザラシの祖先、エナリアークトスは鰭脚類の祖先、プイジラはイタチ類と鰭脚類の共通祖先と考えられる。これらと分子生物学の知見と組み合わせて鰭脚類とイタチ類の進化系統樹を描いた日本語の資料(米澤ら2007、 2008)を見つけました。
鰭脚類の進化 |
上の図で描かれる進化の分岐点②がアロデスムス、①がエナリアークトス、⓪がプイジラまたはそれに近い生き物のはずです。
イタチ類の進化 |
一方、イタチ類の進化を描いた図では、⓪がプイジラに相当します。さて、鰭脚類最古の祖先プイジラを現存の生物と比べると、その形態はカワウソそっくりで、すでにある程度水中生活に適応していたと考えらます。そうすると、イタチの進化を描いた上の図でプイジラからカワウソに至る祖先生物はどんな生き物だったのでしょうか?米澤らの論文によると、それぞれ、
① Mustelavus priscus
② Mustelictis olivieri
④ Plesictis
plesictis
⑤ Plesiogale angustifrons
⑧ Paralutra
と名付けられた絶滅種だそうです。①〜⑤はstem-mustelids と言われる絶滅イタチで、陸上で生活していたようです。⑧のParalutraは、フランスやイタリア、ハンガリーの1000万年くらい前の地層から見つかった小型のカワウソで水中でエサを採っていたらしい。したがって、現存のカワウソやラッコは、半水棲のプイジラの時代から一度陸に上がったあと祖先帰りして、再び半水棲に戻ったということになります。
もともと現在の脊椎動物は魚類から進化してきたので、哺乳類はすべて水棲→陸生のように適応してきたはずです。その後、クジラやアザラシのように再び水棲に戻るものもがあれば、カワウソのように水棲→陸生→水棲を繰り替えすものもいるワケですね。
0 件のコメント:
コメントを投稿