冨田幸光著(丸善)
|
鼻の上に巨大なツノをもつブロントテリウムや、骨のヨロイをつけたグリプトドン、長い毛のはえたマンモスなど、絶滅した哺乳類も恐竜におとらず、子供から大人まで人気は高い。本書は、この多様な哺乳類のなかですでに絶滅し、見ることのできない種の進化の歴史を、精密な復元画と解説によって紹介している。絶滅哺乳類についてのこれだけの詳しい内容と、229種類におよぶ細密画による図鑑は、少なくとも国内では本書が初めてである。(カバーの解説文より)
テレビや新聞で紹介される古生物関連の発見は恐竜のものがほとんどなのであまり目立たないが、恐竜と同じ時代に生まれ、恐竜が絶滅した後に爆発的に進化・多様化した哺乳類についても新発見が続いている。例えば、知られている恐竜が350属であるのに対して、絶滅した哺乳類は4000属以上認められていて、哺乳類の方が多い。
現在海洋を中心として約80種生息しているクジラ類は、ゲノム解析の結果からシカやウシとともに鯨偶蹄目に分類されている。約6500万年前、現在のユカタン半島に巨大隕石が落下し地球全体が寒冷化した。これにより、恐竜を含む多くの生物種が絶滅した後、5600〜4800万年前にかけて温暖化が進行した。当時、現在のインド亜大陸とユーラシア大陸との間には、広大な浅瀬の海「テチス海」が広がっており、この地域には豊富な餌資源を求めて、絶滅を生き延びた陸上哺乳類が進出していた(下図、「古世界の住人」オフィシャルブログ)。
ウマやシカ、イノシシなど蹄をもった動物(有蹄類)の共通祖先である獣(髁節類)の一部は、ネコ科の祖先である食肉類など他の生残り動物に追われ、テチス海沿岸の河口付近でクジラに進化したと考えられている。パキスタンの山岳地帯で5200万年前の化石として発見されたパキケタスは、四つ足の陸上動物でカバとクジラの共通祖先とされる。
一方最初に北米で化石が発見されたバシロサウルス(4000〜3400万年前)は、完全に水棲に移行した形態をもち、その近縁種が現存する全てのクジラ(ヒゲクジラとハクジラ)の共通祖先であることも分かっている。
自分の専門分野の研究対象は、蛋白質やDNAが中心で実験で扱う生き物も大腸菌などの微生物がせいぜいである。しかし子供の頃、生物に興味を持った最初のきっかけは、昆虫や魚、イヌやネコなど生物丸ごと1匹だったはずで、この本を読んでそのことを思い出しました。
カバも同じですか。
返信削除カバはクジラと違って海でなく川に適応しました。なので、カバの耳骨は元に戻って小さくなりました。パキケタスは基本陸生で、大きな耳骨は特に生存に有利だったわけではありません。なぜパキケタスの耳骨が大くなったのか考えてみて下さい。
返信削除