2017年9月8日金曜日

みんなの朝ドラ(木俣冬、講談社現代新書)

朝ドラ「まれ」ロケ地


 富山に来てから通勤時間が短くなったこともあって、出勤前にNHK朝の連続テレビ小説、通称「朝ドラ」を観ることが半ば習慣となった。きっかけは、水木しげる夫妻の後半生をモデルにした「ゲゲゲの女房」。子供の頃から水木さnの漫画はよく読んでおり、放送前に鳥取境港の水木記念館にも二回行った。なによりも、かつて水木プロのアシスタントをしていたつげ義春のファンなので、どのように描かれているのか興味津々で見ていた(実際はつげのことはちょっとしか描かれていない)。その後、渡辺あや脚本の「カーネーション」とその三つ後の「あまちゃん」にハマってしまい、それ以降かかさず観るようになった。ちなみに「カーネーション」で小林薫演じる主人公の父親が自宅で大火傷を負った後、温泉療養先で亡くなる件がありますが、その温泉は富山の山田温泉とされていました。このドラマは実在の人物(コシノ三姉妹の母親)をモデルにしているので、当時の山田温泉は、関西方面から湯治に訪れる人気の場所であったことがわかります。
 この本は、往年の大ヒット作「おしん」から最新の「ひよっこ」までの作品の中から特に15編を選んで解説している。「カーネーション」を“朝ドラを変えた朝ドラ”、「あまちゃん」を“影武者に光を”として高く評価しているので、自分としては不満がない内容である。面白かったのは、能登を舞台にした「まれ」について取り上げた章で、土屋太鳳演じるヒロインを妬んで攻撃する同級生一子役の清水富美加について触れた部分。清水富美加の最近の言動はドラマの中で演じていた一子のそれに似て来たという。清水はこのドラマのヒロインオーディションを受けて土屋に敗れ、お友達役で残ったという経緯をもつ。彼女はこの役を演じて以降、映画出演やテレビのバラエティー番組で活躍するようになり、同じような仕事を志望する若者からは羨まれるような立場にあると想像していた。しかし突然、子供の頃から入信していた新興宗教に出家して所属プロダクションを辞めてしまい、「全部、言っちゃうね」という暴露本を刊行した。その中で、悪魔のような役を演じるのは本意ではなかったと記す。これは、ドラマの中でネットの世界に耽溺し架空の自分像を作り上げる一子役と通じるところがある。一方ヒロイン役だった土屋は、「まれ」以前に魔性の中学生を演じたりしていたのが、その後清水が演じたかったであろう天使のような役柄に恵まれるようになった。また、ドラマの中で一子に横恋慕する高校球児を演じた某有名女優の子息は、その役を演じている他人とは思えないハマリ方が印象的だったが、この俳優も放送終了後程なくして女性がらみのスキャンダルで芸能界を引退してしまった(これは本書では触れられていない)。若い役者さんの場合、演じた人の実生活がその役柄に影響されてしまう、というようなことがあるのかもしれません。ドラマの中の人物像とそれを演じた人の実際の人物像を比較して楽しむのも、朝ドラの醍醐味です。


大沢集落

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