2018年5月15日火曜日

高岡のアシカ1

高岡で見つかった275万年前とされるアシカ属の化石


北日本新聞5月14日の記事によると、高岡市の頭川(凧温泉の近く)で275万年前のアシカ属とみられる鰭脚(ききゃく)類の骨格化石が見つかった。鰭脚類とは、四本の(手)足が魚のヒレのような形になっている動物で、アシカだけでなく、アザラシやオットセイ、セイウチ、トドを含む海洋哺乳類である。現在の日本では主に北海道の沿岸に生息する。大きなくくりでは、イヌ・ネコの仲間で食肉目に分類され、一番近い他の種はクマやイタチである。鰭脚類はアザラシ上科とも呼ばれ、アシカ科、アザラシ科、セウチ科に別れる(トドは大きくてセイウチみたいだが、アシカに分類されている)。今回見つかったのは小型のアシカのようで、北米で化石が見つかっている祖先アシカのピタノタリア(Pithanotaria)に近く、近年絶滅したと云われている大型のニホンアシカとは別系統かもしれません。
 北陸で見つかった鰭脚類の化石としては、10年前に能登の珠洲市で見つかった「アロデスムス」が有名で、こちらは約1600万年前(中新世中期初頭)に北米大陸の太平洋沿岸に現れて、約1400万年くらい前に日本近海まで広がったそうだ。

アロデスムスの復元骨格

アロデスムスは大型のアザラシで、頭骨に比して大きな眼球と3m・300kgを超える体躯を持ち、現在のゾウアザラシのように深海に潜って魚やイカを採っていた可能性が高い。一般的に海洋性哺乳類のことを「海獣」(怪獣ではない)と言い、鰭脚類以外には、イルカを含むクジラ類、ジュゴンやマナティーを含む海牛類とラッコが知られている。ラッコはイタチの仲間なので鰭脚類に近いのだが、以前書いたようにクジラは偶蹄類、海牛はゾウに近いので、鰭脚類とは全く違う種類の哺乳類である。つまり、鰭脚類はクジラやジュゴンとは別の陸生動物から進化して独立に海洋適応したわけです。
 海牛類は沖縄にいるジュゴンを見ればわかるのですが、アシカやカバのように陸に上がることは一生涯ありません。しかし、いつも海面近くに暮らしていて深く潜水することもありません。一方、鰭脚類のゾウアザラシは1500m以上の深海まで潜ることが知られ、クジラと並ぶ極限ダイバーなのです。






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