2019年3月21日木曜日

マンチェスター・バイ・ザ・シー



去年観た映画の紹介をします。タイトルになっているマンチェスター・バイ・ザ・シー(Manchester by the Sea)とは、映画の舞台になっているアメリカ東海岸にある小都市の名前で、ボストン近郊の美しい港町のこと。富山なら泊や氷見のよう感じでしょうか。この映画はもともと、大手の制作会社によるものでなく、amazonがネット配信用に制作したもので、公開された2016年(日本では2017年)は、ララランドやムーンライトなどの話題作があり、日本ではあまり注目されなかった。
 主人公のリー・チャンドラーは、大都市ボストンの集合住宅で雇われ管理人(便利屋?)を務める中年男性。ちょっとハンサムな独身なので、言い寄ってくる女性も珍しくないのだが、まったく心を動かされることはなく、相手にしない。いつも不機嫌そうで、まわりと軋轢ばかり起こしているやっかいな人。あるとき、以前住んでいた港町の病院から仲の良い実兄の死を知らせる電話があり、ここから物語が展開していく。離婚歴のある兄には、未成年の一人息子パトリックが居て、リーはこの甥っ子の後見人を依頼される。パトリックは難しい年頃、学校ではアイスホッケーとロックバンドの活動に夢中で転校したくない。なので、リーに港町に戻って来て欲しいと懇願する。しかしリーは、この街で自身が引き起こした忌まわしい事件の記憶を引きずっており、街に戻ることに大変な苦痛を感じている。ネタバレになるので書けないが、主人公の経験は、その身になれば胸が張り裂かれるような深刻なもので、彼が置かれている苦境や不機嫌さの根源になっている。物語は、リーとパトリック、前妻のランディや数少ない友人など数人の日常を通して淡々と進んで行くのだが、リーがこの後自殺してしまうのか、何かのきっかけで立ち直っていくのかが分かるようには描かれない。ただリーにとって、子供の頃から知っている甥のパトリックが唯一の希望であり救いになっている。
 リーが港町で、他の男と再婚したランディと出会うシーンと亡兄の家で見る夢のシーンがクライマックス。リー役がケイシー・アフレック、ランディ役がミシェル・ウィリアムズ、出色の演技でファンになりました。








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